【天使の羽音】Wheel of Fortune
2008/07/09(Wed)
 何か…あったのかな?
 いつもと感じが違う。

 だから、思わず来ちゃったけど……


***


 キャナの背後にクリムゾンの姿を確認した露華(ルーファ)が、一瞬「ぁ…」っという表情を見せる。
 それに気付いたキャナが振り返るより早く、クリムゾンの明るい声が聴こえてきた。

「ルゥちゃん、アンジェさんはどうしたの?」

「ダンスに誘われて、今は……ぁ、あそこに…」

 さっきとは微妙に違う声のトーン。
 此処で何か…?

 キャナは、自分でも無意識に、露華を庇う様に少し前に出ていた。

 一瞬驚く露華。
 だってキャナは、滅多に公の場に出てこない存在で…。
 だから、むしろ自分がキャナの姿を隠そうと思っていたのに。

 ほんの少しだけ高い位置にあるキャナの横顔を見ながら、露華は微笑みとも苦笑いともつかない表情を浮かべた。

 そう…この人は、いつも……

「…で、こちらは?」

 何となく…刺すような視線を目の前の少女から感じたクリムゾンが、貼り付けたような笑顔で露華に訊ねる。

 けれど、すぐには返答がない。
 2人とも、何となく口篭もっている。

「……もぅ、帰るよ」

 そっと…露華にだけ聴こえるように言い、微笑みながら頭をぽんぽんと軽く叩く。
 そして、白いドレスをふわりとひらめかせて、キャナはその場から姿を消した。

*


 薄い天色の髪と、白い雲を織り上げたようなドレス。
 露華と話していた少女。

 クリムゾンは、少女が居た場所を、暫くぼんやりと見つめていた…。

「今、誰か居なかった?」

 突然視界に入ってきた紅(あか)に、一瞬どきっとする。
 見ると、そこには黒地に紅い薔薇をあしらったドレス姿の沙姫(さき)が立っていた。

「…いや、俺とルゥちゃん以外誰も居ないよ」

 どうしてそう答えたのか…?
 自分自身でも判らないまま、クリムゾンは沙姫の手を取り、再びダンスの輪の中に紛れていった。
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